東京高等裁判所 昭和25年(う)5000号 判決
ところで原判決は判示第一として被告人に対し、被告人が未検査小麦五一俵を法定の統制額を超える価格による代金を以て買受けた事実を認定したことが判文上明白であるに拘らず、この事実に対して法律を適用するに当り、所論のごとく物価統制令第三条、第四条の外、同令第一〇条をも掲げているのである。しかし同令第一〇条は暴利となるべき価格等を得べき契約をし又は暴利となるべき価格等を受領することを禁止する規定であつて、本来判示起過価格による買受行為を処罰するにつき適用すべき規定ではない。そこでこの規定の適用を敢てしたところから観て、原判決の真意の那辺にあるやを捕捉するに苦しまざるを得ないのである。たとえ原判決は右第三条の規定の違反に対する罰則たる同令第三三条の規定を挙示しているとは云え、既に右のごとく適用すべからざる右一〇条の規定を儼として掲げている以上、これは明白な瑕疵であつて、この瑕疵は擬律錯誤の違法を以て論ずることもでき、又理由にくいちがいがある違法を以て目することもできるのであつて、いずれにしてもこの違法は判決に影響を及ぼすものといわなくてはならない。若し夫れ、この瑕疵を以て何等かの誤記に過ぎないとして不問に附しようとするが如きことは、とうてい許さるべきもない。従つて弁護人の論旨第一点はおのづから理由あるものとするの外なく、原判決はこの点において既に破棄を免れない。それ故に、他の論旨に対する判断を省略し、刑訴法第三九七条第四〇〇条本文に則つて主文のごとく判決する。